鳥の「食害」は害ではなく、抑制効果かも。
山形ではさくらんぼ、りんご、洋梨、もも、ぶどうなどの果樹園が多い地域です。
どの果実も鳥の好物のため、鳥による食害対策は農家の悩みどころです。
さくらんぼやぶどうは、雨除けのビニール屋根をつけることが多いのですが、その際に横面に「防鳥ネット」を張り、鳥の侵入を防いで果実を守ります。
そういった施設がない場合は、鷹の模型を置いたり、テグスという糸を張って鳥が来ないようにする対策を取っています。
この地域では、「鳥の害は深刻でムクドリが襲来して全滅した」という話をよく聞きます。
実際、私の畑にもたくさん飛来しますし、ぶどうもたくさん食べられます。
ぶどうが熟し始める時期になると、いろんな鳥が飛んできて房をつついていきますし、さくらんぼの時期は、近くに食べかけの果実がたくさん落ちています。
生食用のぶどうの場合、一部が突かれて傷があると商品価値が1/10まで下がることもあり、確かに深刻です。30%減、もしかすると半分以上が出荷できなくなることもあるかもしれません。そうなると収入がなくなるので、深刻な問題です。
ただ、うちでは突かれた粒を抜けば使えますし、果汁にするため、傷や形は気になりません。そのため、「食害」という意味では非常に軽度です。それでも、確かに食べられているため、畑全体で見ると、もしかすると10%くらい損失しているかもしれません。
ここで、もう一つ、私が大切にしている視点があります。
鳥が来ることで、その糞などの臭いから、捕食される虫たちの警戒心を高めるのではないかということです。
虫たちが大発生すると「食害」につながりますが、天敵である鳥が行き交う畑であれば、虫たちにとってそこは安住の地ではなくなります。つまり、虫の大発生を抑制する効果があるのではないかと考えています。
どのくらいの効果があるかはわかりませんが、秋になってぶどうの葉が落ちると、枝の上に必ず鳥の巣が見つかります。果実を食べない時期であれば、鳥たちは虫を捕食して幼鳥に与えているでしょうから、実質的に「害虫」を獲ってくれています。
誰かの命は誰かの糧になることが食物連鎖であり、生態適合農業における本質です。
私たちがいただかない命は守られる。もしくは他の生きものの誰かの糧になってほしいと思っています。