「風と虫の音に包まれて ー ブドウ畑での収穫の一日」 インターン生の記録
ブドウの収穫、ワインの仕込みをお手伝いしにインターンで来てくれた慶應大学学生のよっちゃんによる記録です。
リリリッ、リリリッ…ジーン、ジーン、ジーン…と、やさしく包み込むような秋の虫の音が響き始めると、ブドウの収穫の時期が訪れます。
ぶどう畑には、たっぷりと水分を含んでまんまるに膨らんだブドウの房が、枝から重たげに吊り下がっています。葉が頭上を覆い、葉の間からは優しい日差しが地面に漏れ、畑全体を穏やかに照らします。
豊潤なブドウの房を手に取り、茎を一つひとつ切り取る瞬間は、まさに自然との真摯な対話そのものです。6月に小さな白い花を咲かせたブドウの木が実らせた命の恵みを、私たちはありがたく受け取ります。
この大自然の営みが育んだブドウを手にしたとき、自然への深い感謝の気持ちが胸に湧き上がってきます。通常であれば、感謝の対象はブドウを実らせた木そのものですが、生態適応農業においては、その感謝はブドウ畑全体、そしてその中に生きるすべての生物へと向けられます。
収穫の合間に、ぶどう畑の中で出会うカエルたちとの「挨拶」も欠かせません。ブドウの木々を見回すと、幹や葉の陰、枝の上に堂々と鎮座するカエルたちが目に留まります。その姿に、自然への謙虚な気持ちを新たにさせられます。
カエルが多く生息することは、畑の生態系が健全であることの一つの指標です。ブドウ畑が豊かな植物や昆虫の生息地であることで、カエルたちにとっては豊富な食料源となります。また、カエルは農作物を害する虫を捕食し、生態系のバランスを保つ重要な役割を果たしています。ブドウ畑とカエルたちは、互いに影響を与え合いながら共存し、その繋がりが豊かな自然環境を支えているのです。
ブドウの収穫は、朝7時に始まり、太陽が真上に昇る正午には終わります。収穫したブドウをたっぷり詰めたカートンを軽トラックに運び、その日の収穫量を計測し、一日の作業を終えます。
毎日、収穫のノルマがあるものの、不思議なことにブドウ畑に足を踏み入れると、時計の針が刻む現代社会の時間から解き放たれ、悠久の自然の流れに身を委ねているような心地よさを感じます。風が吹き抜け、虫たちの奏でる音が響くこのブドウ畑では、私たちがいかに自然と寄り添って生きていけるかを考えさせられます。
寄り添うということは、主役が自分ではなく、自然であるということです。しかし、その主を見誤ってしまうことがしばしばあるのかもしれません。自然とどう寄り添い、寄り添うとは本来どういうことなのかを、深く考えさせられた畑での経験でした。
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