最高品質の加工品は、規格外では作れない
・商品加工に携わる前、規格外でいいと
「規格外品を有効に活かす」というときに、加工による事例がよく紹介されます。
果物や野菜のジュースやペースト、パウダー、ジャム、調味料など、多くの商品が工夫され、作られています。
また惣菜加工の会社さんと親しくする機会に恵まれ、規格外食材をたくさん使っていただいておりました。
そういった経験から「規格外で加工品を作る」という認識が定着していました。
ですが、規格外品を使うことで山のように課題が出てきて、それをカバーできるのは料理人さんの圧倒的な技術力があってのことだということも知るようになりました。
例えば、
大きすぎるものと、小さすぎるものが規格外となりますが、その大小それぞれでもサイズが異なります。大きな鍋で茹でる際、同じ時間で均一に茹で上げるためには、同じサイズにカットするだけでなく、繊維質の強さや水分量に合わせてカットするサイズを微妙に変えないといけません。
そのためには、それぞれを見極めて作業するため、均一な作物を取り扱うのと比べて、2〜3倍の作業時間がかかっているようでした。
そこで規格外を使う理由は、「安いから」というよりも、「捨てる野菜をなくしたい」という想いからでした。
つまり最終的な商品を考えれば、規格が揃ったものを使った方が、美味しさも高められますし、作業コストも価格も抑えられるのです。
私たちがネークルと同時並行で経営する果樹園では、葡萄を生産し、ワインを作っているのですが、
まわりのぶどう農家さんから話を聞くと、生食用の葡萄を作り、そこから出た規格外品をワインやジュース向けに業者に格安で販売しているようです。
だから、「ワイン用に」というと「たくさん作らないとお金にならないね〜」と言われます。
ですが、ワインに適した房のサイズや糖度・酸味・皮の厚さ、粒のサイズなどがあるので、ワイン用の原料としては、圧倒的な差がありますし、生食を超える経営収益を上げています。
ある大手のお菓子メーカーの農業コンサルタントさんに聞いた話では、そのメーカーは、契約農家さんの全量を買い上げているそうなのですが、「一個あたりのサイズが〇〇gのものを8割作ってくれれば、倍の金額で買い取れる」とおっしゃっているそうです。
それは、買い上げた作物のうち、理想とするサイズであればメインの商品を最も美味しく作れるらしいので、たくさん欲しいのですが、実際には買い取る量の5割も満たないそうです。
それ以外のサイズのものは、別な商品を作る必要がある上、商品別の利益率も著しく落ちるそうです。
そういった観点から、一番美味しくて、たくさん売れる商品に最適な作物が8割になれば、2倍を払っても十分に利益が出せるそうです。
「加工品は規格外品で作る」ではなく、加工用ほど適正な規格が有益であり、生産者も加工会社も収益を改善できる、そういう視点を持つようにしています。