3つの理由から、6つのこだわりを持ってお味噌を作っています。
以前、なぜお味噌を作るのかという投稿をいたしました。
そんななぜ作るかの理由があるので、こだわることもあります。
その6つ(今は)をご紹介させていただきます。
《1、生味噌であること》
〜生きた菌、菌の死骸、菌が生み出すもの、それが健康につながる〜
「生きた菌が良い」とは言いません。「菌の死骸」が腸内細菌の餌になっているということもわかっています。また生きた菌は、少しづつ発酵を続け旨みを増やしたり成分を分解したりと「熟成」の役割も担っています。
なので、常に分裂と増殖している生きた菌が多ければ菌の死骸も増え、それは腸内細菌のエサも増えることであり、私たち人にとって好都合だと考えます。だから私たちは生味噌にこだわっています。
《2、添加物不使用であること》
〜素材と菌たちの力を最大限発揮するために”不使用”という選択〜
一般のお味噌で使われる添加物は、以下のようなもの。
・酒精 〜 色の変化や菌の働きを止めるために添加
・ソルビン酸 〜 保存性向上のために添加
・ビタミンB2. 〜 色を鮮やかにするために添加
・調味料(アミノ酸等)〜 旨みを補完する
・次亜硫酸ナトリウム 〜 漂白を目的に添加
上記は、流通の都合、商品の品質維持、保存性などを考慮して使われているものなので、ロスなく大量に消費するためには大変重要な役割を果たしています。
ですが、消費者の皆様の理解が深まり、購入後の使用方法や、価格への理解、色の変化や熟成が許容されるような風潮になれば、これらは不必要になってくるものと思います。
私たちの「薬の代わり」にしたいという健康視点で言えば、これらがない方がより目的に近づけられるので、「使わない」という選択をしています。
《3、原材料が自然栽培であること》
〜素材で競合の軸を変え、自然の調和にも貢献する味噌〜
私たちは、自然と調和して、生きものたちと共生する農業の仕組みを広げたいと考え、それらの生産者と協業してそれらが増えるような取り組みを目指しています。だからお味噌作りの原材料が自然栽培作物であることは当然の理由です。
ただもう一つ考えているのが、食用の大豆の80%が海外産で、価格と量で、海外の作物を競争しても太刀打ちできないという現状についてです。補助金・交付金などの国費を投じたとしても、同じ土俵で戦おうとするには無理があると思います。
なので「国産」というだけではなく、自然栽培のような健康にも自然環境にもインパクトを与えるような競争力のある「付加価値」で商品づくりする選択肢も必須だと考えています。
《4、味噌の中の菌の多様性があること》
〜未知の世界の腸内環境は、特定の菌よりもバランスが重要〜
腸内細菌と健康を調べていくと、「腸内フローラ」と言われるように多種多様な菌がいて、それらのバランスが免疫力や健康維持などに貢献していることがわかってきています。
そこには、「生きた菌」、「菌の死骸」、「菌が生み出す多様な栄養」などが作用しているようで、まだまだ科学的に未知な領域が多いようですが、昔ながら味噌を使い続けたきた文化から類推しても、健康への影響は大きいはずだと期待できます。
なので、お味噌を「昔(いにしえ)からの叡智」と捉え、それらの本質を追求していきます。
それ特定の麹菌などの発酵菌ではなく、多様にバランスし合った環境が良いと思うので、それらを製造工程に組み込み作り上げていきたいと思います。24年の醸造からそのアイデアをまた一つ足していきます。
《5、天然発酵であること》
〜原点回帰、時間と変化を楽しむ食文化へ〜
発酵のメカニズムとその効果を調べ、「私たちの健康への貢献」という視点に照らし合わせて考えた時、やはり熟成の期間と工程はとても相乗効果が高いものとわかってきました。
抗酸化力や旨み成分の増加は、この発酵・熟成の過程にポイントがあるようです。
原料の大豆も、麹の原料のお米も麹菌も、お塩も、そして発酵させる酵母菌も味噌蔵のそばで作られるとしたら、それらの植物と微生物はその地の気候風土に沿って生きてきたものだと思います。
光と空気の流れは遮るものの、その土地の季節と昼夜の気温の変化は、お味噌を発酵させる環境で同じように与えます。
だから地域によって発酵具合が変わるのですが、大豆もお米も菌たちもそれまで育った気温変化を同じように受けながら熟成させます。まだ科学的ではないかもしれないけど、そこにはなりの土地なりの特徴や美味しさに強く影響しているように思います。
だから加熱するような方法ではなく、天然発酵にしています。
《6、各地で作ること》
〜元々あった各地の食の多様性を魅力にする〜
各地のお味噌と食文化について調べていくと、寒い地域は塩分が強めだったり、麹をお米、麦、豆で作るなどの違い、その地域特有の大豆に合わた発酵方法など、47都道府県では区別しきれないくらい多種多様な味噌作りの文化があります。
聞くところによると100年ほど前では、各地の農家さんが自家用に作った大豆を麹屋さんに頼んで味噌を仕込み自宅で発酵熟成するような習慣があったようで、そのくらい各地の小さい単位で味噌作りがごくごく一般的に行われていたことがわかります。
その地域の気温や湿度や雨量のほか、主力作物との関係があるように、複雑で多様でありながら全国で同じようにご飯(お米)との関係があり、「日本食」の中心にあるのだと思います。
だから、各地の味噌蔵で、その地域の大豆とお米(または麦、豆)とお塩でお味噌を仕込み、その地域で天然発酵させることが魅力だと私たちは考え、少しづつ全国の伝統的な造りをしている味噌蔵さんのご協力を得て造っていきたいと思います。
お味噌について素人だった私たちは、各地の職人さん一人一人のお話を聞き、それぞれに違った歴史や哲学があり、それぞれに違った環境で取り組まれていることを知ることで、どれほど奥深く複雑な世界であるかを知りつつあります。
画一的でわかりやすいことが好まれる傾向にある社会情勢ですが、私たちは、多様性があり複雑で、一歩一歩近づかないとわからないことを魅力として、好奇心を持って取り組んでいきたいと思います。