シネコカルチャーを訪ねて ― 食べられる森づくりへ
シネコカルチャーとは
シネコカルチャーは、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の舩橋真俊さんが研究を進めている農法です。土を耕さず肥料も農薬も使わずに、多種多様な植物を混ぜて密に育てます。生態系がもともと持っている力を引き出しながら、人の手で生態系を豊かに「拡張」していく。そんな考え方が根っこにあります。
ぶどう畑の下草から
いにしえのぶどう畑では、下草の多様性を豊かにすることから手をつけてきました。
協生農法やシネコカルチャーを知ったとき、手探りで続けてきたことがよい方向を向いていたのだと感じました。
私たちは、それを栽培法というよりも、農業のあり方を指した生態適合農業と呼んでいます。

その手応えを科学の言葉で確かめているのが舩橋先生です。一度直接お話を伺いたいと思い、ソニーCSLのオープンハウスを訪ねました。

肥料を施さないことが、おいしさにつながる
会場では、シネコカルチャーの研究からわかってきたことの一部が紹介されていました。生物多様性が豊かな環境では植物がつくる二次代謝産物も多様になり、それが食味によい影響を与えているというお話です。
さらに、おいしさを高めるポイントとして、窒素・リン酸・カリを土に施さないことが挙げられていました。舩橋先生がそれをはっきりと口にされたとき、私はとても嬉しくなりました。
肥料でおいしさをつくるのであれば、肥料を入れ続けることが前提の農業になります。それもひとつの道だと思います。けれども「施さないほうがいい」という研究の結論は、生きものとの関わり方から農業を考えてきた私たちにとって、大きな励みになる情報でした。



大磯の圃場で
翌日、大磯にある実証実験の圃場にご招待いただきました。研究の内容や植物が育つ様子を見せていただき、作業もほんの少しだけお手伝いさせていただきました。






百聞は一見にしかず、でした。どの植物をどう植え、どう実らせ、どう配置するか。そこには数字だけでは伝わらない感覚の領域があるように思います。
こんなに生き生きとするのか、という驚きがありました。そして同時に、手入れの大切さもあらためて感じました。
人の手で整えられた場所でも、人が手をかけて生態系を拡張していくことで自然に戻っていく。その姿は、自然に任せれば200年かかる時間を先取りしているように私には見えました。
研究から、食卓へ
大磯の圃場は研究のための場所で、販売を目的としたものではありません。ここで得られた技術やしくみの知見を応用して、食べものとして求められるかたちにつなげていくこと。それが私たちの役目だと考えています。
食べられる森づくりへ
いにしえの畑には、まだ使われていない場所や森と接している場所があります。そこにシネコカルチャーの技術を取り入れて、生態系を広げていこうと思います。
そして2027年3月から、仮称「食べられる森づくりサークル」を立ち上げます。多様性のある場所で、自然から食べものをいただく。そんな体験ができる場をつくっていきます。詳しくは、またあらためてお知らせします。