[代表インタビュー vol.7]生き物との関わり方を深めていくための「農」
※こちらの記事は、慶應義塾大学政策・メディア研究科の学生、林聖夏さんに、弊社代表の伊藤誠が受けたインタビューを書き起こしたものです。
林:
はい。なるほど。結構、伊藤さんの農の位置づけみたいなのも生態系を知るために農業をしてる感じなんですか。それはまた違いますかね?
伊藤:
私のスタンスの中心にあるのは、生き物と共存するってこと。命を大切にする文化を育てるっていうのが私の中心にあるので、生き物との関わり方を深めていきたいんですよね。それが私の人生の目的なので、それを成し遂げるために、農業という分野にフォーカスして、その中で、あらゆる生き物と共存する農業の仕組みをつくっていこうというのは私の中に見えたので、それを今深掘りして追及してるっていう形です。
林:
なるほど。生き物との関わりを深めるっていうときに、食をつくるっていう、その手段だけじゃないじゃないですか。その中で作物をつくるっていうところにフォーカスした理由とかって何かありますか?
伊藤:あの、農業を変えたかったんですよ。一番は。
元々、元々っていうか、20代のときに、野生動物の保護活動をボランティアでやってたんですね。
その時にハクビシンが連れてこられたりとか、鳥が怪我してきたりとか、商業動物を治療して自然に帰したいんだけども、ハクビシンも外来生物ということで、自然に還せないんですよ。
そのときに保護してる活動に対して、農家さんたちが、「そんなね食害するような動物殺してしまえ」って普通に言うんですよ。「助けなくていいから殺して駆除しろ」って言うんですね。
それを聞いて、もうすごいショックだったし、農家ってなんて酷い奴らだってすごく思ったんですけど、まあね、食べ物をつくる仕事だから、言ってもらわなきゃ困るし、でもその生き物を殺すことで、自分たちの生きる糧を得てるってすごく矛盾を感じたんです。
で、そこで教えられたのが、命を大事にすればするほど美味しくなるような農業ができたらいいよねっていう話があって、その一つの例に、宮城県の北部でやってる冬水田んぼっていうのがあるんですよ。
冬期湛水農法っていって、冬の間に、稲刈りが終わった田んぼにもう1回水を張るんですね。そうすると、そこに水生動物とか虫とか微生物がたくさん出てきて、周りに雪が積もって草花がなくなった時期に、渡り鳥が飛んでくるんだけど、渡り鳥たちがその田んぼの水を張ったとこに降りて、水生昆虫を食べてまわるんですよ。
で、そのついばんだときに土がほっくり返されて泥が上がって水が濁るんだけど、そうすると、空気が入るし、中の有機物が分解されて、簡単にいうと肥料みたいな、トロトロ層っていう、栄養分たっぷりの泥ができるんですね。
それを一冬越すと、春に田植えする頃には、有機の肥料を入れることなく、肥料たっぷりな土ができてるので、そこに田植えをすることで、良い形で作物の菌が育っていく。
しかもその微生物を大事にしてるから農薬を撒かないので、稲にはクモがついて、虫から守ってくれて、ってやって、生き物を大事にしてく。
渡り鳥もそうだし、微生物もそうだし、生き物を大事にすればするほど美味しいお米が取れるよっていう仕組みだったので、あ、このような農法を広げていけば、動物なんか殺してしまえって言われる必要がなくなってくるから、じゃあ私がやりたいと思った命を大切にする文化っていうのを、この農業で実践できるなと思って、自然環境じゃなくて農業ですよね。
生きる糧をつくる経済の中にいる一員として、命を守る仕組みっていうのをつくれるなと思ったので、今までの肥料農薬とかで、虫とか病気を殺したりする農業から脱却して、虫たちを大事にすればするほど私たちの作物が美味しく育つんですっていう農業にすればいい。
そしたら、やればやるほどっていう世界にいけるので。やればやるほど生き物たちが生きやすくなって、調和が取れて、自然環境が良くなってっていうふうに連鎖していくので、そういう農業をつくろうと思って、やってます。