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「奇跡のリンゴ」の木村秋則氏から学んだこと

私は、映画や本で有名な「奇跡のリンゴ」のモデルとなった木村秋則氏に学び、それをもとに自分自身の目的であった生きものと共生する農業を作っています。

木村先生については、これまで何度も質問を受けてきました。
そのたびに断片的には話してきましたが、一度きちんと文章としてまとめておこうと思います。

私は2014年に弘前へ移り住み、約7ヶ月間、圃場で直接指導を受けました。

世間では「奇跡のリンゴ」を生んだ人として知られていますが、実際に現場で学んだのは、技術以上に自然との向き合い方そのものでした。

わからないことを受け入れ、自然から考える

木村先生は、質問をすると本当によく教えてくれます。
技術や知識、過去の経験も含めて、惜しみなく話してくれました。

ただし、必ずセットで伝えられたのが、
「道具として、たくさんの知識や技術を持っておくのは大事。でも、それが全部使えるわけじゃない」
という考え方です。

やり方を覚えること自体は否定しませんが、それをそのまま当てはめても、うまくいかないことの方が多い。
だからこそ、まず畑をよく診断し、今どんな状態なのかを見極めなさい、と教えられました。

多くの人は「正解」や「方法」を知りたがります。
けれど、それを教えても、実際には役に立たないことが多い。
それよりも、ヒントは自然の中にあるということを知り、見て、考える癖をつけてほしい。
先生が本当に伝えたかったのは、そこだったのだと思います。

「近くの自然をよく見なさい」

これは何度も言われた言葉です。
山や林、原野、河川敷。どんな地域にも、人の手があまり入っていない自然があります。
そこにある植物の姿、土の状態、水の流れを観察し、それを畑で再現するように整えていけば、作物は育つ、という考え方です。

特に印象に残っているのが、田んぼについての話です。
「田んぼのことを考えたいなら、近くの沼に行ってみなさい」

 ・沼にはどんな雑草が生えているのか。
 ・それぞれ、どの深さから生えてきて、どの深さになると草がなくなるのか。
 ・お米の仲間の草は、どんな様子をしているのか。
 ・水中の泥に手を入れたとき、その温かさはどう感じるか。

そうやって自然と自分の田んぼを見比べていくと、
対策や環境づくりについて、何かしら思いつくはずだ、と。

自然は「やり方」を知っているわけではありません。
うまく成り立つための条件や、環境の組み合わせを知っている、ということなのだと思います。
そして、自然の変化はとてもゆっくりです。

私たちが焦っても、自然の変化のスピードは変わりません。
だからこそ、私たちのほうが自然に合わせる、という姿勢も大切だと教えられました。

畑の見方を、真似することで身につける

畑の「見方」についても、多くのことを学びました。
新しい畑や、「見てほしい」と言われた畑に行くと、
先生はまず畑の高い方、あるいは地続きで続く丘の方へと歩いていきます。それも、大股で。

私はそれを意識して真似していました。
「真似をすると、何かに気づけるかもしれない」と思って、同じように歩いていたのです。

すると自然と歩幅が大きくなり、体重がしっかり土に乗る分、
土壌の硬さや、微妙な違いに気づきやすくなりました。
結果として、足裏で畑を感じ取る感覚が身についていったように思います。

高い場所へ歩きながら、地下水がどの方向から流れ込んでいるのかを推測する。
その手がかりになるのが、そこに生えている草花でした。
水を好む草なのか、乾燥を好む草なのか。
それを見ることで、水はけや湿り具合が見えてきます。

さらに、茂った草をかき分けて土を掘り、香りを嗅ぐ。
そこで教えられたのが、放線菌の香りでした。
「この香りを覚えておきなさい。これで、畑がどれくらい回復しているかがわかる」
数値ではなく、香りという感覚で覚える指標です。

また、

  • この草が多いのは、土が硬いから
  • この草が多いのは、水はけが悪いから
  • この草が多いのは、表土が削られて間もないから

といったように、草そのものが畑の状態を教えてくれる、という見方も学びました。

60ページの財産

当時、一緒に学んでいた研修生それぞれが、日々の気づきをメモに書き溜めていました。
それらを寄せ集めてまとめたものが、約60ページの資料です。

木村先生から学んだことは、
「奇跡」を起こす方法ではありませんでした。
自然に意識を向け、失敗を重ね、その中で見つけてきたもの。
その積み重ねが、結果として多くの人に「奇跡」と呼ばれるものにつながったのだと思います。

自然を完全に理解できないことを前提に、
それでも観察し、考え続けること。

この姿勢は、今の自分の畑づくりや、ものづくりの根っこに、確かに残っています。

今でも、たまにそれを見返します。
具体的な「答え」が書いてあるわけではありませんが、
自然にどう意識を向け、どう考えようとしていたか、その視点が詰まっています。

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この記事を書いたのは

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代表取締役
井形 誠
2007年ころから、「あらゆる生き物と共存する農業の仕組みを作る」と自分の方針を固め、自然栽培の農業研修を受け、自然栽培食品店の責任者をし、自然栽培の果樹園を拓きました。 農業に転職する時、「販売の得意な農家になれば、後発農家も優位に立てる」と考えてマーケティングを勉強し、それを活かして「やればやるほどに自然が豊かになる農業」に取り組んでいます。 『薬に代わる食』『人と地球の健康を改善する』『いのちを大切にする文化を育てる』そんなテーマに共感できる方々を前進していきたいと考えています。

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