生きものと共生する畑をつくって見えてきた自然の摂理
「自然の摂理」という言葉を聞くと、少し大げさに感じるかもしれません。
けれど、畑に立ち続けていると、自然には人間の想像を超えた“流れ”や“関係性”があるように感じることがあります。
私たちは、生きものと共生する畑を目指してきました。
- 草の多様性を拡張する。
- 虫や鳥、微生物たちを行き交う環境を作る。
- 生きもの多様性を複雑にする。
そんな畑づくりを続ける中で、見えてきたことがあります。
それは自然が、「単純」ではなく、「複雑な関係性」で成り立っているということでした。
自然の摂理という言葉を聞いて、自分の畑で起きていること、そこから感じたことを、少しまとめてみたいと思います。
自然とは何なのか。
なぜ森は何百年も循環し続けるのか。
なぜ多くの生きものが共存できるのか。
畑を続けるほどに感じるのは、自然は人間が思っているより、はるかに複雑で、精密で、そして関係性によって成り立っているということです。
自然を観察していると、「効率」や「排除」だけでは説明できない世界が見えてきます。
そこには、生きもの同士が互いに影響し合いながら存在する、“自然の摂理”とも呼べるような仕組みがありました。
自然は、単独では存在していない
自然界には、単独で生きるものはほとんど存在しません。
植物は微生物とつながり、虫は植物に影響を与え、鳥は虫を食べ、菌は落ち葉や死骸を分解する。
草も、虫も、菌も、動物も、それぞれが関係し合いながら存在しています。
私たちは「食物連鎖」という言葉で自然を説明することがあります。
もちろんそれも自然の一部です。
しかし実際の自然は、「食べる・食べられる」だけでは語れません。
距離を取り合う。
影響を与え合う。
時には助け合う。
そうした複雑な関係性の中で、生態系は成り立っています。
進化とは、“強さ”だけではなかった
進化というと、「強いものが生き残る」というイメージを持つことがあります。
確かに淘汰は存在します。
しかし自然を観察していると、それだけでは説明できないことが数多くあります。
実際には、
環境に適応したもの。
他の生きものとの関係性に適応したもの。
共生できたもの。
そうした存在が、長い時間をかけて残ってきたようにも見えます。
自然界では、強すぎる存在は逆に孤立することもあります。
一方で、他の生きものとつながりながら生きるものたちは、全体の中で役割を持ち、循環の一部になっていきます。
自然は、複雑になるほど安定する
畑を見ていると、多様な生きものがいる場所ほど、全体が安定しているように感じます。
一種類だけが極端に増え続けることは、自然界ではあまり起きません。
草も、虫も、菌も、互いに影響し合いながら、増えすぎを抑え合っています。
つまり自然は、「単純だから安定する」のではなく、「複雑だから安定する」という側面を持っています。
多様な存在がいることで、一つが暴走しにくくなる。
この複雑さによる安定は、自然界の大きな特徴の一つだと感じています。
生きものを減らすほど、食べものは不安定になる
私たちの食べもののほとんどは、生きものです。
野菜も、果物も、穀物も、発酵食品も。
その背景には、微生物や虫、土壌生態系の働きがあります。
つまり、食は生きものによって支えられています。
しかし現代は、生きものを減らす方向へ進む場面も少なくありません。
雑草を減らす。
虫を減らす。
菌を減らす。
もちろん必要な管理もあります。
ただ、生きものを排除し続けるほど、食べものを支える土台そのものが弱っていく可能性もあります。
自然の豊かさとは、生きものの豊かさなのかもしれません。
発酵と腐敗は、人の都合で分けられている
味噌や醤油、ワインなどの発酵食品を扱っていると、微生物の働きの奥深さを感じます。
自然界では、分解は循環の一部です。
人にとって都合の良い変化を「発酵」と呼び、都合の悪い変化を「腐敗」と呼んでいます。
しかし自然の側から見れば、どちらも分解であり、循環の働きとも言えます。
落ち葉も、動物の死骸も、菌や微生物によって分解され、やがて次の命へとつながっていく。
自然界では、「不要なもの」はほとんど存在していないのかもしれません。
人は、自然をまだほとんど理解できていない
私たちは科学によって、多くの自然現象を解明してきました。
しかしその一方で、まだ分からないことも数多くあります。
土の中で、微生物たちは何をやり取りしているのか。
植物はどんな情報を交換しているのか。
香りや音、菌、生態系は、互いにどう影響しているのか。
自然はあまりにも複雑です。
もしかすると人は、自然の摂理をまだ1%も理解できていないのかもしれません。
だからこそ私たちは、自然を「支配する対象」ではなく、「学び続ける存在」として向き合う必要があるのではないかと思っています。
人は自然から離れるほど、バランスを崩す
自然界は、循環し、つながり、支え合いながら成り立っています。
しかし現代社会は、分断し、単純化し、効率を優先する方向へ進んでいます。
その結果、土壌も、食も、人の体も、少しずつバランスを崩しているようにも見えます。
自然の摂理から離れるほど、私たちは不安定になっていく。
そんなことを、畑に立ちながら感じることがあります。
生きものと共生する畑から、自然を学ぶ
私たちは、生きものを減らす畑ではなく、生きものが増える畑を目指しています。
草があり、虫がいて、菌がいて、鳥がいる。
すると不思議なことに、土が変わり、香りが変わり、味わいも変わっていきました。
自然を支配するのではなく、自然の摂理の中で育てる。
生態適合農業は、そんな挑戦です。
自然を理解することは、とても難しい。
それでも、生きものたちとの関係性に目を向けることで、私たちは少しずつ、自然の豊かさの本質に近づけるのかもしれません。
いにしえが考える自然と食
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