いにしえからのお知らせ

News
ホーム > interview > インタビュー書き起し② > 6、「命を大切にする」という信念の進化と実践への道 【R6.9月インタビュー6/10回目】
interview

6、「命を大切にする」という信念の進化と実践への道 【R6.9月インタビュー6/10回目】

 >こちらは、令和6年9月に慶應義塾大学院の林さんの研究の一環として受けたインタビューを文字起こししたものです。パターンランゲージという学問を使って、自然と調和する生活を送るためのヒント作りを調査研究されています。<

vol.5<<   《一覧へ》  >>vol.7

林:

なるほど。その変化についてインタビューでお聞きしていますが、実践の変化だけでなく、心情面の変化や自然への向き合い方の変化についてもずっと聞かせていただいています。そこで、もう一つ質問ですが、「命を大切にする」という感覚の変化について伺いたいです。

最初のお手伝いの段階でも「命を大切にする文化を育てる」という感覚はあったのでしょうか?

井形:

もうその時点で確立していましたね。

林:

そうですよね。その中で、まずボランティアとして関わっていた時には、どのような感覚だったのか。そして、木村さんのところで学んだ後はどのように感じるようになったのか。最後に、自分で自然栽培をしている今、どのような感覚になったのか。大きく3つのステップがあると思うので、それぞれについてお聞きしたいです。まずは、お手伝いの段階で「命を大切にする文化を育てる」という視点で関わっていた時は、どんな感覚だったのでしょうか?

井形:

野生動物に関わっていた頃のことですか?順番としては、野生動物のボランティアをして、その後で自然栽培を始めたという流れですね。

林:

そうですね。では、最初に野生動物のボランティアをしていた時の感覚をお聞きしたいです。農業研修を経てどのように変わったのか、食を育むという視点で、どのような変化があったのかも知りたいです。もし過去に戻って関連することがあれば、どんなことでもお話しください。

井形:

「命を大切にする」という考え自体はほとんど変わりませんでした。それが起点であり、人生の目的でもあったので、そこは変わらず、意味合いややり方がどんどん変わっていったという流れです。農業研修の時は、農薬を使って虫を殺していましたが、農薬を使いたくないという気持ちはありましたし、「使わなくてもできる方法があるんじゃないか」というくらいの感覚でしかありませんでした。自分の実践の時には農薬を使いたくないとは思っていましたが、周りから「そんなことできるはずがない」と言われ、押しつぶされそうな気持ちでした。

それでも心の中では「自分が実践する時にはそうしよう」と思い続けていました。リンゴやモモの木を借りて自然栽培を始めた時には、単に自分だけではダメだなと感じつつも、「まず自分がやらなければならない」と思っていました。その一方で、「これが本当に自分の目的に沿っているのか」「自己満足ではなく、経済的に成り立つのか」という不安が常にありました。それが生活できるのだろうかという不安が常に心にあり、とても大変でしたね。

それでも、その不安を理由に辞めようとは思わず、「こっちで生活費を稼ぎながら、あちらで実践を進める」といった合理化や整理を心の中でしていたつもりです。ですから、「道のりは長いな」という気持ちがありました。生き物に対する気持ちは何も変わらず、ただ目の前で虫が蕾を食べているのを見るのは悲しかったですね。でも、そこから始めるんだなという感じでした。

その後、木村秋則さんに出会い、一緒に勉強させてもらう中で、彼の考えをすべて受け入れようと思いました。自分のエゴを捨てて、後から理解できるだろうと考え、まずは学ぶことを学びました。その後、自分の考えと照らし合わせてカスタマイズしていけば良いと思っていたので、最初はすべて鵜呑みにしていました。

研修生の中には「健康のために」と考えている人が多かったのですが、私はずっと「命の共生が図れる農業だ」と考えていました。他の研修生は、虫を敵として見て「これを防がなきゃ」と考えていましたが、私はそれが面白くないと感じていました。なぜ虫が出るのか、その原因をみんなで探りましたが、最終的には「畑が不自然だからだ」という結論に至ることが多かったです。畑の土が露出していたり、草花が少なかったりしたためです。

その時に「コンパニオンプランツを使って虫を防ごう」という話が出ましたが、それは本質的な解決策ではなく、畑のあり方自体が間違っているのだと感じました。私自身もそのやり方を実践していましたが、その後、東京の店舗に関わることになり、現場から離れてしまいました。それは寂しかったですが、いろんな農家さんと関わりながら実践し、哲学を学ぶ機会を得たので、「いつか自分が始めた時にはこうしよう」と考えながら進めていました。

「命を大切にする文化を育てる」という根本的な考え方は変わらず、農業でどう実践できるかという手段をずっと探していたという感じです。そして、2020年に山形に帰ってきた時に、「これをとことんやろう」と決意し、やっとスタートしたという感じですね。心情の変化に関しては、「大変だな」という感じで、根本は変わらず、むしろ深まっていったという感じです。

vol.5<<   《一覧へ》  >>vol.7

この記事を書いたのは

Writer
アバター画像
代表取締役
井形 誠
2007年ころから、「あらゆる生き物と共存する農業の仕組みを作る」と自分の方針を固め、自然栽培の農業研修を受け、自然栽培食品店の責任者をし、自然栽培の果樹園を拓きました。 農業に転職する時、「販売の得意な農家になれば、後発農家も優位に立てる」と考えてマーケティングを勉強し、それを活かして「やればやるほどに自然が豊かになる農業」に取り組んでいます。 『薬に代わる食』『人と地球の健康を改善する』『いのちを大切にする文化を育てる』そんなテーマに共感できる方々を前進していきたいと考えています。

関連記事

News

お問合せはこちらから