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8、変化と影響:自然と向き合うための姿勢と学び 【R6.9月インタビュー8/10回目】

 >こちらは、令和6年9月に慶應義塾大学院の林さんの研究の一環として受けたインタビューを文字起こししたものです。パターンランゲージという学問を使って、自然と調和する生活を送るためのヒント作りを調査研究されています。<

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林:

やっぱり変化が感じられますね。最近、変化に興味があって。昨日もお伝えしましたが、小さい頃の経験がないと厳しい、みたいな話をよく耳にします。例えば「小さい頃に生き物が好きだったから、それが大きいんだ」と言われたり、生まれ育った環境が違う里山の子供たちには勝てない、と話す大人たちがいます。その方々も実践者なんですが、そう言われると、私は少し絶望感を感じるんです。私はその環境で育ったわけではないけれど、そういう風に生きたいと思っている。でも、過去の経験がない私たちでも、今からできることは何かないのか、と考えます。追いつくというわけではないけれど、実践者の良い実践を私もできないのか、という葛藤があります。

都会育ちの子たちも同じような葛藤を抱えている子が多くて。そんな中、井形さんのように自然との関わりや価値観の変化がどう起こったのか、心理的な面でも、どんな変化があったのかに興味を持ちました。今のお話ですごく繋がった感じがします。

井形:

そういう観点で見ると、昨日言った変なセミナーのです。

林:

どのセミナーでしょうか?(笑)

井形:

火渡りとかですね。あれは、普段できない体験をすることが、経験者にとってすごく大事な趣旨なんです。そこで言われたのが、「影響されやすいっていいことじゃん」ということでした。どんどん変化しなければいけないので、変化するきっかけって、何か影響を受けた時ですよね。友達関係だと「お前、影響受けやすいな」って馬鹿にされたりしますが、それこそ最高だと思うんです。変われるチャンスなんだから。影響を受けて「それいいね」と実践することで、自分のものになり、どんどん変化していけるのが良いんだと思います。

きよかさんが言うように、小さい頃の経験が大きいのかもしれませんが、今のできることとしては、どんどん影響を受けていくことです。小さい頃影響を受けた人に近づいて、「その感覚すごい、私もそうなりたい」と思っても良いし、今からでもその体験をしてみよう、という姿勢も良いです。どんどん影響を受けて、変化を好んで取りに行くことが大事だと思います。

だから、師匠を見つけて、その人を軸に自分を変化させていくことは、良い手段だと思っています。影響を受けやすいというのはすごく良いことだと捉えています。ただ、ベクトルや人生の目的は明確に持っているので、この人が師匠となるかどうかはわかりやすいです。この人に影響を受けようと思ったら、ほぼ間違いなくそれが正しいと感じます。

私も、ただ大学受験をして良い大学に行って、インターンをして就職していたら違った人生だったと思います。でも、今は「今できることをやっていこう」と思えるし、過去の出来事をどう捉えるかで変えていけば良いと考えています。影響を受けやすいのは良いことだと思っていますし、それを重ねていくことで、自分の哲学や考え方がまとまってきている感じです。

佐藤:

この話を聞いていて、「生きる喜びを創造していきたい」という言葉が、どうして農業をしている人たちから出てくるんだろう、と不思議に思っていました。でも、井形さんのやり方が今の事業に具現化されていて、小さい頃に動物が好きだったという経験から、命の有限性を感じて、その有限な時間をどう喜びに変えるかという方向で考えた結果、「生きる喜び」という言葉が出てきたんだな、と感じました。井形さんの中には、ずっと軸があるように思いました。

井形:

確かに、自分の死生観もそうなんですが、やはり自然の中で生き物と向き合う姿勢が強かったです。私たちは、自分に意識があるから感情があり、生きる意味を感じるのだと思っていますが、植物にも生きる目的が必ずあると私は捉えています。

その時、その植物の目的に沿って生かしてあげられたら、それが喜びだろう、と仮定しています。例えば、植物たちは私たちに食べられることを嫌がっているのか、それとも食べられても良いからこうしてほしい、という何かがあるかもしれません。彼らの目的を最大限に理解して、いただくことができたら、それが一番良い商売かもしれないと考えます。だから、無駄にすることも殺すことも良くないし、いただくことが一番良いのかもしれないと感じるようになりました。

どんな生き物にも命の目的があると思います。その目的に沿った命のいただき方ができれば、それが喜びなのではないか、と思っています。まだこちらの都合かもしれませんが、そういう考え方を持って生き物たちと向き合っています。

佐藤:

神道との繋がりのお話もありましたが、井形さんは最初から神道の考えに至ったわけではなく、自然界を観察する中で、その摂理が神道の考え方と似ていることに気づき、そこから繋がっていったのかな、と思いました。さらに、八百万の神という話の中で、あらゆるものに命があり、それぞれに役割があるという教えも、井形さんの考え方と重なり、体現されているなと感じました。

井形:

体現するまではできていないかもしれませんが、その理解には近づいていると感じています。「おてんと様は見ているよ」というような、誰かが見ているからこうするのではなく、常に自分のあり方を問う必要があると思うんです。それが、対象物との関わり方だと思っていて、一対一ではなく、一対多の関わり方がある。自然だったり、人だったり、生き物だったり、さまざまな対象が存在しますよね。その中で、より今の最善は何か、と考えることが良い答えを導き出すのではないでしょうか。

林さんが言ってくれたように、やってきたことが神道の考えに通じる部分があると思います。だからこそ、神道をもっと深く知れば、自分の理解も加速していくんじゃないかと感じています。神道が良いとかではなく、そこに込められたものをどんどん引き出したいという気持ちです。教えそのものというわけではなく、考え方や活かせるものが増えるだろうという、そんな興味や好奇心を持っています。

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この記事を書いたのは

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代表取締役
井形 誠
2007年ころから、「あらゆる生き物と共存する農業の仕組みを作る」と自分の方針を固め、自然栽培の農業研修を受け、自然栽培食品店の責任者をし、自然栽培の果樹園を拓きました。 農業に転職する時、「販売の得意な農家になれば、後発農家も優位に立てる」と考えてマーケティングを勉強し、それを活かして「やればやるほどに自然が豊かになる農業」に取り組んでいます。 『薬に代わる食』『人と地球の健康を改善する』『いのちを大切にする文化を育てる』そんなテーマに共感できる方々を前進していきたいと考えています。

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