[代表インタビュー vol.10]自然の中に私たちが食べるものができる、自然と畑のあいだの「森」をつくる
※こちらの記事は、慶應義塾大学政策・メディア研究科の学生、林聖夏さんに、弊社代表の伊藤誠が受けたインタビューを書き起こしたものです。
林:
また戻ってしまうんですけど、さっき聞きたいなって思ったのが、森をつくりたいっていうところ。今ちょうど実験中だとは思うんですけど森をつくりたいのは、結構多様性の観点から森をつくりたいってことなんですかね?なんで森をつくりたいのかっていうのと、つくるために何をしているのか、どういうところを心がけているのか、どういうところがやっぱり大事なのか、っていうところを聞いてみたいです。
伊藤:
最初の方にもあったけど、自然を考えたら人はいらないんじゃないかってなるじゃないですか。
林:
はい。
伊藤:
それはそれでね、自分の中でもあることでもあるし、自分が影響を受けたオーストラリアの原住民のアボリジニっていう方々の一部でも、もう人がここにいちゃいけないっていうことで子孫を残さない選択をするっていう人たちもいるぐらい、やっぱりそういう地球にとって害悪になってきちゃったかなという思いもあるんですけど。
でもちょっと私達が介在することでできることもあるんだっていうのを今自分の中で思ってるので、その観点からでもあるんですけど、今後100年後の農業ってどうなってますかっていう質問をされたことがあって。
ずっと考えてることだったんですよ。それは、農業っていう生業はなくなってもいいんじゃないかなと。ていうのは、自然、人工も当然あるんだけども、自然の中に私達が食べるものができてくる、与えられるんじゃないかなと。
そういう世界に向かっていくように、農業が進化して、自然の中に私達が食べたいものがなるような仕組みをつくる。都会だとイメージしづらいかもしれないんですけど、私達が15分歩いたら、あの山とあの山にはこういう木とかこういう作物があって、採ってくれば2日分ぐらい採れるよねって。
とか、今公園みたいになってるところに、スーパーに買い物に行くものと、ちょっとあの野菜あの辺にないかしら、って山に入って、見つけたって採ってきて、食べる分だけ収穫してくるっていう生活が、原始時代に戻るんじゃなくて未来をつくっていくことができるんじゃないかと思ってるんですよ。
うん。なので、農業って生業は、畑じゃなくて、自然とか森とか林をつくって、その中にごくごく自然に実がなったり、葉っぱができたりするようなものが、100年後の農業の姿なんじゃないかなと私は思ってるというか、そういうふうにしたいなと思ってたんです。それをより現実的に考えたらどうなるのってやったときに、果樹園なり、野菜畑っていうのは、もうモノカルチャー、単一で栽培するのが普通なんだけども、より複雑にした方がいいんじゃないかというのが最初頭にあって、リンゴとかにつく虫っていうのも大量に発生するんだけど、大量に発生するっていうのは大量に発生しやすい環境をつくっちゃったからだろう、っていうと、虫同士、いろんなものが牽制しない関係ができたから、大量発生するんだなと。
じゃあリンゴの畑の中に、山に生えている木を持ってきて植えたら、その木につく虫とか関係する虫が少し増えるから、大量発生を抑制するんじゃないかっていうところを考えた時期だったんですね。その時に協生農法の話で教えてもらって、りささんと話をしたりとか、実際江府町に行ったりした。森をつくろうと思い始めた頃に、江府町に行ったら、協生農法でやるのが自然以上の生態系をつくるって話を聞いたので、これだと思ったんですよ。私がやろうとしたリンゴの畑の中に木を植えようというのもそうだけど、もっといろんなものを植えて、森にすると日陰ができて、下草が抑えられてくるから草刈がいらなくなってくるし、多様性が拡大して、より牽制し合う環境ができて、そうすることで、自然に一歩、畑と自然の間にある森ができて、その中で私達が生業として果樹をいただく、野菜をつくるとかっていうことができれば、あ、次のステップ、100年後の未来のステップがちょっと見えてくるかなというのを思ったんですね。
それは同時に、魚が好きな農家さんがいて、田んぼに上がってくる魚も結構いるらしいんだけど、海から川を伝って上がってきて行くと。途中リレー形式で、大きな川から小さい川まで上がってくる魚がいて、それを最終的にクマが食べたりとかして、海の栄養が山に届けられるっていう生態系があるわけですよ。そうやって大きな循環をしてるのを私達が今阻害してしまってるので、できたら、田んぼなのか川なのかをうまく利用して、遡上してくる魚とかも山奥に入って来れる環境をつくって、動物たちが川から獲ったものを山に還してくれる。それを、私達が意図的に作りたいなと。
川のまわりの近くで、協生農法と自然栽培の畑の森をつくって、ちょっと先に里山みたいな人がちょっと住める場所があって、さらに山があって、そこに動物が行き来できる川まで行き来できて、協生していけば、海の栄養は山に運ばれて、いろんな形で、物質的な循環も生き物の循環も始まってくるので、その一歩として、森が必要かなと。畑の森。
道路で分断されてしまうとやっぱり動物が行き来できないので、ちょっとそんな大きなことを構想してて。そうだ、その一歩で森をつくりたいなと。森の中で作物を採れたら、次に進めるかなと思ったので。
林:
確かに。鳥取のときに地元のおじちゃんがセリを採ってくれたん採ってくれたときはすごいなんか感動しました。こういうことか、みたいな。
伊藤:それが、品種改良って今悪く言われるけど、自然に近い品種改良もできるはずなので、自生しやすくなるような、その生態系に調和しつつ自生できる品種改良ってできるはずなので、それでやっていけば。今そっちに向いてないじゃないですか。モノカルチャーでやる前提で品種改良が進んでて、農薬肥料を使う前提があるんだけども、その前提がちょっと変わって、自然の中に自生できるような品種改良という方向にベクトルが向いた瞬間に一気に発展すると思うので、そこに魅力を感じられるような仕組みづくりを今私たちでやりたいなと。
vol.11に続く