[代表インタビュー vol.19]「自然」に近づけようと意固地になるのではなく、状況によっては人工のものを使う
※こちらの記事は、慶應義塾大学政策・メディア研究科の学生、林聖夏さんに、弊社代表の伊藤誠が受けたインタビューを書き起こしたものです。
林:
ちょっと全然話が変わるんですけど、私がさくらんぼ農園に行かせていただいたときにネットを張ってたじゃないですか。
伊藤:
うん。
林:
別の農園さんで、鳥の鳴き声を流してたところがあったじゃないですか。まず私はそこで違和感を抱いて。確かにあれはネットをしないとやっぱり食べられちゃうなって思ってネットをするか、ああいう鳴き声を聞かせるかみたいな、なんかどっちかしかないのかなみたいな。森ってネットをしてないじゃないですか。森を目指すとなると、ネットは外されることになるんだろうなと思いつつ、でも今はネットしてるってことはやっぱり難しいのか、バッティングするっていうのを、そこはどう捉えてるんだろうっていうのはちょっと今ふと・・・
伊藤:
食害をゼロにしようとは思っていなくて、食べられるんだろうなとは思ったし。ネットは基本的には鳥を避けるのが大きな役割なんだけど、花が咲くじゃないですか。そこにハチが来て受粉をしてくれるんですよ。風が強いとハチが飛ばなくなるので受粉をしなくなって実がならなくなるので、ネットで囲むと、風がおさまってその中は穏やかなので、ハチが来たときに、もう受粉をたくさんしてくれる環境ができるんです。あれは網目が細かい防風ネットってやつで。
林:
なるほど。
伊藤:
基本的には、あれ(6月中旬)の40日ぐらい前に(さくらんぼの木に)花が咲いているんだけど、そのときにハチが受粉しやすい環境をつくるっていうのが一番の目的。で、私たちがはったやつも隙間だらけなので鳥はもう出入り自由なんですよ。ただ鳥も食べやすいところから食べていくので、ネットがあるだけで、ネットの周りとかは食べられないとか、上の方は食べられるけど、食害の場所が限られてくるので、ほどよく守られるかなっていうぐらいのもの。
あとは、ネットがあってちょっと入りづらいなと思ったら違う畑に飛んでいってくれるので、それぐらいの感じですね。将来的には、あんだけ栄養価の高いものがたくさん実っていると鳥もね、効率的に食べに来れるので、たくさん来るだろうなとは思うんですけど、やっぱそこもアンバランスがあるから、たくさんやられるだけであって、多分森の中とかにあればそんなに大量にはやられずにできると思うし、お互い牽制し合ってるので、ムクドリがね大量に来るってことも少ないと思うので、それは今の状況だから致し方ないかなという感じですかね。
林:
なるほど。確かに、そこにさくらんぼの木だけがあるから、守らざるを得ないというかネットを張らざるを得ない環境になってるけどっていう。
伊藤:
そうそうそう。ムクドリたちの天敵になるような猛禽類とかまたいたら、あんなに繁殖はしないと思うんですよ。
林:
確かに。
伊藤:
隣のクリ畑にも散々繁殖する場所があるから、ああなっちゃっているだけで。でももし木の種類が違ってフクロウがとまりやすいとかなれば、あの辺に巣はつくらなくなるし、いろいろ変わってくると思うので、それはもう今の現代の社会がしょうがないから、そういうふうになってるし、それを自然に近づける、自然にこだわってるからってネットを貼らないんだって意固地になっても、ただやられるだけで、経済的には負担が大きいので、そこはそういうのを理解した上でそこはそういうふうにやってこうかなっていうぐらい。ただ鳥の鳴き声は不快なので、あれはやりたくないですよね。1ヶ月くらいずっと流れてたけど、聞いてる方がおかしくなっちゃうよね。やっぱり悲鳴みたいな声なので。多分作物も美味しくなくなると思う。ああいうのを聞いてると。
林:
やっぱりそうですよね。音とかも関係しているっていいますよね。
伊藤:
それこそ、NHKのやつにもありましたけど、防御物質って言ってね、鳥の声とか何かで、もしかすると、防御反応で不味くするとかっていうのがあるかもしれないし、ちょっと不快なものって多分、不快の音を聞いたものって私達が食べた時にも不快に感じる気がするので、あれはあんまり効果がないし、デメリットの方が大きいかなと思ってますね。
vol.20に続く